第44章 愛されてることが※裏

走る足を休め、沖矢さんに連絡すれば、迎えに来られた。

「沖矢さん、暇ですよね」
「まぁ」
「……冗談ですよ」

いつも振り回してごめんなさい、と。
小さく謝罪を述べた。

「…○○さん」
「はい」
「僕は、彼の元にいる貴女に利用価値があるとみてます」
「…あぁ、前にも言ってましたね」

零が関われば、使い物になる的なこと。

「正直心配していたんですが、…今の貴女は、前よりも執着がある」
「…だから？」
「貴女が傷ついて使い物にならないのは…と思ってはいましたが、大丈夫そうですね」
「……ベルモットさんから、アクションがあれば…それが如何なる方法でも…取り入れろってことですか」
「ええ、…ほんの少しでも構いません、彼らの動きが分かれば」

…沖矢さんと私の関係で、勘違いしない理由が、こういうとこなんだと思う。
彼は私に抱かれろと命じれるし、私も彼が誰を抱こうと何も思わない。
だからこの人といるのが楽なんだ。

「それなら」

私も、零に愛されるためにもう一つの可能性。

「…もし、それ以外で彼の…バーボンの動きが分かれば、大丈夫ですか」
「…良い傾向ですね」

褒め言葉のついでにキスをされた。

「……沖矢さん、キス好きですよね」
「そうですか？」

…無自覚かよ、と小さく呟いて相手の顔を見れば…初めて、この人が困惑してるような顔を見た。

「……いや、私も好きですけど…」

零じゃないキスは、…沖矢さんと以外したくないくらいには。

「…気持ちが良いからですかね」

クスッと笑われて…こういう人だった、と思った。



家まで送り届けてもらい、お礼を告げて別れた。
零の家でお風呂に入らなかったのは初めてで。
洗い流したくはなかったけれど…汗でベタつく体は落としたく、シャワーを浴びた。
裸になって気づく。
首元の傷と痕。
…体中につけられた、零の独占欲。

私は…降谷零のものでいられるという安心感に、情けなさと笑顔が、こみ上げた。

「零…っ」

濡れる体に呆れてしまう。
それでも…零を思って濡れる体を慰めることが…嫌ではないと思ってしまうくらいには…

零に満たされた。


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