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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第43章 痕※裏


ああ、もうっ…泣きそうな気持を流すようにお酒を煽る。
一度知ってしまった甘い時間は、今も大事にされていて。
会える距離にいることが、こんなにも…切ない。
前みたいに零がどこにいるのか知らないほうが、まだ…
なにも、よくないけど。

「…零は、私なんかがいてもいなくても、変わらないです」

私がいなくてできないことなんて、あったらいけない。

「だから、きっと零、疲れているだけだと思うんで……零のこと、よろしくお願いします」
「…あのさ、あまり自分の価値下げるようなこと言わないほうがいいぞ」
「え?」
「少なくとも、仕事上変わらなくても…あんたがいるときは確かに柔らかかったんだから」

零に愛されていたい。
…それはもう、叶わないけれど。

「…っ…零に、会いたい…」

自分の中だけに飲み込んでいた想い。
沖矢さんの前では安室さんと呼ぶから…零への気持ちは自分だけの中にあった。
言葉にすると恋しくて。
会いたくて。
泣きながらお酒を飲む私を、二人は笑って最後まで付き合ってくれた。
思い切り泣いてお酒が回る。
二人に大丈夫か、と言われながら大丈夫だと言ってタクシーに乗り込んで。
行き先を告げた。



「…いや、なにしてんの」

タクシーが停まったのは、安室さんの家の近くで。
自分の行動に呆れるしかない。
去っていくタクシーを呼び戻すのも、と思っていたら。
零の車が…隣を通った。
自宅駐車場に停まっていくその車を眺めた。
お酒のせいで零に会いたい気持ちに素直になってしまったけれど、会う権利なんてどこにもない。
…のに、目が合ってしまった。
不機嫌を隠さないオーラ。
…それもそうか、と。零の話をしてしまったら会いたいに決まってるじゃんか、なんて心に言い訳をして最後にと思い顔を上げた…ら、あの人近づいてきませんか。

すごい、怖い。
とにかく、怖い。

物凄い剣幕で近づいてくる。
本能的に逃げ出したけれど、私は彼に一回も勝ったことが無いことだけは言いたい。
手首を捕まえられて、追い付かれて。

「何をしていた」

また、探っていたのかと…傷ついた顔を、しないでほしい。





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