【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第43章 痕※裏
いるかとシャチのぬいぐるみ。
幸せなデートの日…零が買ってくれたもの。
零のキスが、痕が、薄れていく毎日。
零といた時間が嘘のようで。
首筋の痕が薄っすらとなって、見えなくなった頃。
先輩に、安室さんと別れたと告げた。…梓さんも知っていたから、彼からも伝えていたのだと分かる。
それでも、嫌でも会う私たちは顔を合わせて普段通りを演じた。余計に話さない、余計に近づくことはないけれど。
…零が、そこにいるだけで良かった。
あの頃と違う。
零がいなくなったわけじゃない。
…好きでいるだけで良い。
零が傷つかない世界を、私が少しでも…作ることができるなら。
そのためなら、別れたことを後悔はしない。
沖矢さんとは、あの日からずっと連絡をとりあってる。
…毎日家に帰って盗聴器がないことを調べた上で連絡をとるのは手間だけど。
私は…沖矢昴の協力者として動くことを選んだ。赤井秀一のことを知るために。
零が傷つかない世界のために。
それは傲慢で。
零が望んでいないことはわかっていた。
…沖矢さんには、私が離れるほうが傷つくのではとすら言ってもらえた。
そんなことは、ない。
…降谷零はたかが女一人に振り回されるわけがない…
探偵事務所終わりに気分転換へとショッピングモールに向かった先。
下着売り場を眺めていたところ、背後から声をかけられた。
「○○ちゃん」
お久しぶりね、と…振り返った先、美人な女性は口角をあげる。
サングラス越しでもわかる美人度。
「…貴女、情報収集は得意かしら?」
「私はバーボンの命令に従うのみです」
「聞いたわよ。貴女のこと捨てたって」
捨てた?……私が零の信頼を裏切ったから、だ。
「もう一度、協力してくれないかしら」
「………お断りします」
「たくさんの男とスるの、…貴女、好きでしょう?」
…好きなわけない。
好きなわけ…
「○○さんっ!」
どこからか聞き覚えのない声がして。
回りを見渡しても誰もいなくて。
ベルモットさんの方を向けば…いなくなっていた。
「……誰?」
「僕ですよ」
沖矢昴。
背後に突然現れたから…驚いた。
先ほど聞こえた声は、沖矢さんではないのは確かだったし。
それにしても…下着売り場にもさらっと現れる精神は改善してほしい。
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