【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第25章 無能
ベッドに横にされて…キスをしながら、服を脱がされた。
「……そんな、見ないでください」
まじまじと見られる裸体に、羞恥で体を丸めた。
「こんなに簡単に抱けるなんて思いませんでしたよ」
簡単に、と言う沖矢さんの言葉がわからずに…
キスが心地よくて。
心地よいのに…
涙が止まらなくて。
「っ…待って…ごめんなさ…」
胸の突起に吸い付かれて、首を振った、
嫌だ、と…体が拒む。
「ごめんなさい…っ」
それ以上は嫌だと言えば…小さなため息。
自身の喉元を少し触って
「『○○』」
零と同じ声音。
「『抱きたい』」
…なんでこの人から、零の声がする。
なんで…
私はその声に、抵抗をやめてしまう?
目元を手で塞がれて…零の声で甘く囁かれて。
…触り方も、体温も違うのに。
零の声で。
「『良い子』」
「…っ…透さ、ん…」
息遣いも、放つ言葉も違うのに。
零。
零に抱かれたい。
零が欲しい。
「…ッ…嫌だっっ…!」
零じゃない。
零じゃない、それに。
体を起こして体を離した。
「……聞きません、貴方からどうして透さんの声をするのか」
聞かないから。
「貴方を求めた私を今すぐ忘れてください」
「…元から無理矢理することはありませんよ」
零の声じゃなくて…いつも聞こえる沖矢さんの声。
「タクシー呼びますね」
「……はい」
…だめだ。
私は…抱かれたらだめなのに。
なんでこんなにも、…中途半端な気持ちになるのだろう。
「では、お気をつけて」
「はい、…ありがとうございました」
あれから必要以上の会話を交わせなかったのに…
「また来てくれますか」
「………友達、ですから」
最後の寂しそうな声音に、頷いてしまう自分が一番嫌になった。
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