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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第2章 架空の“彼氏”




「…くく、いえ…すみません」

肩を揺らす隣の男の反応には納得いかない。

「サンドイッチと卵焼き、交換しませんか?」

笑いながらする提案に小さく溜息を吐いて、断るのも不自然だと諦めて頷いた。

「どうぞ」

まだ使っていない箸で卵焼きを掴んで隣の男の口元へ運べば、一瞬キョトンとしたような顔をしたあと嬉しそうに卵焼きを口に入れた。

そして自分がやっている恥ずかしい行いを自覚した。

「○○…結婚手前の女がそれはダメだ」
「………スミマセン」

所謂“あーん”行為だったことに気づいて恥ずかしさで頭を下げる。

「美味しい、味付けは出汁ですね」

彼が持ってきたサンドイッチを一つもらって、食べてみるとコンビニで食べ慣れたサンドイッチとは違う味。
…ほんと、パーフェクトな男だなと改めて思う。

「ところで○○さん、結婚されるんですか?」
「そうだそうだ、それで来月か再来月に辞めるって話を先ほどしてたばかりなんだ」
「…へぇ。相手はどんな方なんですか?」

昨日キスした相手からの視線は、何を考えているのかわからない。

「料理上手ですよ、年齢もあまり変わらなくて…」
「幸せですか?」
「はい、……昔から大好きな人だったので」

想像した。
あの頃考えていた降谷零との未来を。

「…よかったです」
「これはお祝いだな!今夜は飲むぞ!」
「先輩は何かにつけて飲みたいだけじゃないですか!」
「今夜は俺の奢りだ、安室君も空いてるか?」
「はい、空いてますよ」
「○○は彼氏君を呼んでも良いぞ」
「やですよ、絶対からかわれるじゃないですか」

毛利先輩の嬉しそうな姿を見てると、断りきれなくなる。
今夜は諦めて付き合うか、とお弁当を食べながら先輩の喜ぶ姿に目を向けた。
サンドイッチも食べ終わり、休憩時間の終わりにはいい時間になって。

「せめて食器くらい下げますよ」
「ありがとうございます」

いただいたサンドイッチのお礼に食器をポアロへ運ぼうとして。
少し外しますと事務所の扉を閉めた途端目の前の男の顔つきが変わって。
抵抗も何も、状況が分からずに壁に背を押し付けて口付けられていた。

「卵焼きご馳走様でした」

唇を離して笑う彼に何を言われたのか理解できず。
食器を手から奪われてポアロへ向かう彼の姿を、呆然と見送った。



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