第4章 ザップと私
あ、やっぱり心配して見に来てくれたんだ。
そんなキャラじゃない奴なのに。
ちょっと見直した。0.1mmほど。
「最近、仕入れとか発注とかやらされるようになって……」
むろん、日勤の激務中にそんなもんをやるヒマはないので、必然、残業になる。
ちなみに店長は私に発注を任せ、先に上がってしまった。
「はあああ? おまえの仕事の範疇(はんちゅう)じゃねえだろ!?
それで給料上がったわけじゃねえんだろ!? 馬鹿? おまえ、マジで頭イカレてんのか!?」
馬鹿に馬鹿って言われたぁ!!
でも罵り返す気力もなく、ザップの腕につかまる。
「でも結構面白いんですよ。皿洗いと接客だけじゃスキルにならないし、こういうことを勉強しとけば役に立つかなあって」
裏方に関わるようになって分かったが、あのクソ店長、客が勝手に入るからって感覚で仕事しすぎだ。
美人の客には勝手にチャーシュー二倍とか普通にやってたし、まずそういう無駄なロスを止めさせ、売上データから発注を根本的に見直した。
そして製造廃棄を減少、売れてるものを増やす。それだけ。
私でなくとも出来たことだが、結果、今月の売上は二割増しになった。
「なのにお礼どころか私へのアタリがキツくなって……女がでしゃばるなって言うなら何で発注任せたの……。
そのくせ『もう遅いから今夜は店に泊まっていったらどうだ』とか、怖いわボケぇ……」
涙目になってると、ザップは私の背をポンポンと叩いてくれた。
「おまえが愚痴るなんて、よっぽどだったんだな。頑張ったな」
よしよしと頭を撫でられ、悔しいけどジワッと泣きそうになった。
それから後はちょっと覚えてない。
でもアパートについて半分寝てるのを、ザップにお姫様抱っこでお風呂に連れて行かれ、身体を洗ってもらった。
そしてベッドに大事に横たえられ、その後はいつもより優しく……ええと、以下略。
とりあえず、超気持ち良かったです。
そんなことしたって、お小遣い、増やさないからね?
そして、私は幸せな気分で眠りについた。
…………
うるさい。
スマホの着信音がうるさい。薄目を開けると、時計はまだ朝の四時だった。