第4章 ザップと私
深夜を過ぎたヘルサレムズ・ロット。
女が――いや男でも一人で歩くにはリスクのありすぎる時間だ。
でも私はそこを歩いていた。
家に帰らなきゃいけない。
かといってタクシーを呼ぶ金もないので。
ヤバい……マジでヤバい……。
時間帯もそうだが、身体もヤバい。
足下がふらつく。平衡感覚がない。ホント、倒れそう。
するとすぐさま、犯罪者どもが寄ってくる。
「姉ちゃん、どうした? 飲み過ぎたかあ?」
違ぇよ、ヤンキーども。貴様らと違って私は過労だ。
「俺らと遊ばない? 天国に連れてってあげるからさあ」
うるせえわ、クソチ○コども。
どんなに頑張ったって、あのクズには足下にも及ばねえわ。
だが馴れ馴れしく肩に手を回され、路地裏に連れて行かれそうになる。
面倒くさいなあ、と思いながら懐のスタンガンに手を伸ばそうとすると、
「おまえら、そいつに何か用か?」
怒気のこもった低い声。
誰かが私をヤンキー共から引き離し、腕の中に抱き寄せる。
『ひっ……!』
その眼光と殺気に、ヤンキー共は瞬時に怖じ気づく。
――と、そこでそのまま逃がせばカッコいいんだけど。
「で? こいつに手ぇ出しといて、タダで済むと思ってんのか?! ああ!?」
「すすすすすみませんでしたー!!」
「ああああの、こ、これ、少ないですが!!」
ヤンキー共が慌てて財布を出すが、
「あん!? ホントにこれだけかあ!?
てめぇら、ここで裸にひんむいてもいいんだぜ!?
おら、持ってる物全部出しやがれ!!」
『ははははいーっ!!』
……助けた側の方が、よほどタチの悪いチンピラである。
私はためいきをつき、楽しそうにカツアゲするザップにもたれた。
…………
「いやあ、いい金になったぜ。通りがかって得したなあ」
ゼーロ札を数えながら、クズはほくほく顔である。
「そら良かったですね。じゃ、とっとと消えて下さい。
今日という今日は、ホントにセックス出来ないし」
私の疲労は限界値だ。
家の玄関で倒れたら、そのまま朝まで寝てしまいそうだ。
「…………おまえ、最近どうしたんだ? 前より帰りが遅いじゃねえか。
俺が見に来れるときはいいけど、いつもは無理だ。そのうちホントに襲われるぞ?」
ザップは金をしまい、ポツリと言う。