第3章 愛人同盟と私
「どこまでアホなんですか、ザップ。あなたが庇えば、シンディは余計に私たちを憎むだけ。
もっと過激になって、次は手榴弾を投げつけてきますよ」
私は腕組みし、床をのたうち回るクズに言い放った。
「自分のことは自分で何とかします。だからあなたはもう少し、女の手綱の握り方を勉強して下さい」
「んぁあ……」
ビールまみれになったクズは、しょぼーんと、ワケの分からない声をもらす。
「それは分かった……じゃあさあ……」
見下ろす私たちを見上げ、二ヘッとだらしなく笑い、
「これから4Pしねえ?」
…………
…………
三十分後。場所が変わって、私たちは表通りの高級カフェに来ていた。
「いやあ、やっぱ女子会なら金をかけたいですからね」
運ばれてきた三人分のスペシャル特大チョコパフェに、我々はご満悦であった。
「ホント、ザップがたまたま持ってるなんて奇跡もあるものね」
「どうせ誰かが貢いだ金でしょ? そう思えば、使うのも罪悪感ないし~」
私たちは顔を見合わせ邪悪に笑い合う。
ザップ? 財布を奪われケツにパイプをブッ刺されてゴミ捨て場に転がってますが、何か?
「けど」
私は手を止め、考えた。
「あいつ、本命っているんですかね?」
何人、愛人を作ろうが誰か一人に執着する、なんてことは無さそうな男だが。
でもいつかは引導を渡され、子供でも作るんだろう。
そんなとき隣にいそうなのはと、想像する。
しかし今のとこ、そんな長期的関係を結べそうな愛人に、心当たりはない。
『…………』
残り二人は私を凝視し、なぜか沈黙。
「お二人の見立てはどうです? 私は21番ストリートのアイリーンさんじゃないかと思うんです。
何たって店のナンバーワンだし、頭いいし、家庭的なとこもあるっていうし。
ザップさんも夢中でプレゼントして――どうしたんです? お二人とも」
けど二人はボソボソと、
「気づいてないよ。マジで気づいてないわ」
「腹立つわー。シンディじゃないけど切りたくなるわー」
「……え? ち、ちょっと!? 二人とも!?」
何やら不穏な単語が聞こえ焦ったが、二人はひそひそと話している。
愛人同盟は今日も和やかなのであった……。
――END