第3章 愛人同盟と私
私は無表情に続ける。
「現在のあなたの愛人の正確な数、性格傾向、活動範囲を調査します」
「そ、そんなことしてどうするんだよ!! ま、まさかおまえら、他の女をつぶして回る気じゃ――」
ザップが最後まで言うまえに、アンナが奴につかみかかり、見事な背負い投げを披露する。
私はつかつかと奴の元に歩き、うめくクズの頭を、遠慮会釈なく踏みつける。
『ぐぇ!!』とニワトリが絞め殺されるような小気味の言い声がした。
「逆です、クズが。この会合は、私たちの身の安全を図るのが目的です」
「……え」
私はグリグリと頭を踏みつけながら、
「ザップ・レンフロのクソさを理解していない愛人の中には、『ライバルを全てつぶせばザップは自分だけを見てくれる』と勘違いしている過激派もいるのです。
よって私は一部の愛人の方と協力関係を結び、日々、情報収集に当たっているのです」
ザップは真剣な目で私の下着を見上げ『白か……』と呟いているが、スルーする。
「――さっき『シンディ』って言ってたな。てことは、あいつが何かやらかしたのか?」
ズリズリとジャネットの太腿に頬ずりしながら言う。
私はその後頭部に蹴りを入れながら、
「あなたの前ではずいぶんと媚びを売ってるようですが、なかなか暴れん坊な雌猫さんですよ。先日は客を装って、私の顔をスパッと横一線に切ろうとしてきました」
「――――!!」
何で私のお顔が無事かと言えば、その前に気づいてスタンガンで気絶させたからだ。
これも同盟で事前に情報を仕入れ、警戒してたからだ。
「ま、こういうこともあるから、私たちは――」
「……すまん。チサト!!」
ポカンとした。あの――『あの』ザップ・レンフロが私に謝ってきたからだ。
まるで私が本当に切られたかのように、私の顔に手を這わせ、唇をかみしめた。
「あいつがそんなことをするなんて……シンディによく言い聞かせとく!
おまえを襲うとかそんなことは、今後絶対させな――ん?」
ジャネットがクズの背後に回り、クズを羽交い締めにする。
そして私は、よく振ったビールを奴の顔面に向け、プシュッとタブを――。
この世の物と思えない悲鳴が響き渡った。