第5章 ヘルサレムズ・ロットとクズと私
馬鹿だった。私物をサッと取って帰ろうと思ったら、もろに巻き込まれてしまった。
「うるせえ! てめえの失敗で俺らは大損だ!! 落とし前つけてもらうぜ!!」
店長の半分くらいの年齢の若いチンピラが、店長の頭に靴のカカトを落とし、踏みつける。
くぐもったうめき声。嫌悪感しかない店長だったけど、さすがに可哀想だ。
だけど助けようにも助けられない。
すると店長が私を指さし、
「ち、ち、違います! あいつです! あの女が一切を仕切ってて、私は命令されただけで……!!」
……前言撤回。可哀想とか思うんじゃなかった。
「うるせえ!!」
だがマフィアに蹴られ、店長は黙る。
「連れて行け」
そして店長はすすり泣きをしながら、表に連れて行かれた。
後には私と、何も知らず出勤した従業員だけが残されてる。マフィアの一人が上司らしき男に、
「こいつらはどうします?」
残った私たちは注意を向けられ『!!』と背筋を強ばらせた。
私たちは店長が関わってたヤバい仕事なんて何一つ知らないし、関わってもいない。
だがマフィアの幹部らしき男は、私の胸をチラッと見、
「その女は連れて行け、一応話を聞かせてもらう。他は全員殺せ」
後ろの従業員たちがワッと泣き出した。
私は冷たい汗が流れた。
「ん?」
だがそのとき。
店長が連れて行かれた表から騒ぎが聞こえた。
「何だ!?」
「うわ……! 視界が!!」
どうしたんだろう。マフィアたちが目を押さえ、突然苦しみだした。
「何?」「いったい何が……!」
従業員たちが戸惑ったが、
「今のうちに逃げますよ!!」
私は彼らに命令し、自分が最後になって、脱出しようとした。
だがすぐ、
「畜生!! 殺してやる!!」
こちらに銃口を向けられた。
あ。
まずい。逃げられな――。
「俺の女に手ぇ出してんじゃねえっ!!」
声が轟き、マフィアは切り裂かれた。
血のように赤い刃が見えた。
「チサト!!」
細身だけど、たくましい腕が私を助け起こす。
信じられないくらい精悍で、見たことのない武器を使って――。
「そこで伏せてろ、すぐに終わるから!!」