第4章 伝えたい
姉が仕事で忙しい日は、姪のゆきちゃんを家で預かり、母や私が面倒を見る。
2歳ということもあり、お気に入りのテレビ番組は『ママンとトゥギャザー』である。ゆきちゃんは、その放送時間には必ずテレビを見る。
今日も今日とて、いつものようにママンとトゥギャザーを見ている。私も一緒に見るおかげで、姉や保育園のママ友と語り合えるくらいには詳しくなった。
ちなみに、姉はいけてるお兄さん派、私はもちろんうらみちお兄さん派である。
テレビには、ちょうどうらみちお兄さんが子どもからの質問を受けていた。
相変わらず、衣装の上からもよくわかる肉体美だなぁ。
「おにいさんのいやしは何ですか?」
「最近の唯一の癒しは、スーパーのレジの子に『お仕事お疲れ様です』って言ってもらうことだけど、そんなお兄さんを可哀想な人だと決めつけたらダメだよ。凝り固まった考え方は時に他人を傷つけるからね」
相変わらず、ローテンションのうらみちお兄さんの発言は子ども達に理解されていない。しかし、うらみちお兄さんは慣れているようで、浮かべていたニヒルな笑みをスっと引っ込めると、営業用の貼り付けたような笑顔に切り替えてABC体操へと番組を進行させた。
番組は進んでも、私の思考回路は先程のうらみちお兄さんの発言から先に進まない。
もしかして、さっき話に出たスーパーのレジの子って私の事だろうか。そうなら、私の一言がうらみちお兄さんの唯一の癒しということになる。私がうらみちお兄さんに頼りにされていると考えると、なんだか嬉しいような、むず痒いような気持ちになる。
「愛実ちゃん、笑ってるの?」
「愛実、気持ち悪いわよ」
ゆきちゃんと母に指摘され、緩んだ口元を抑えた。
早くうらみちお兄さんに会って、あの一言を伝えたい。