第2章 はじめまして
本当なら、クラスメイト全員の個性を見てからしたかったのだが──それも運のうち。
──せっかくだし、ちょっとおどかしてやろ。
諦めて、軽く拳を握った。
相澤からボールを受け取り、
「いけぇ!」
爆豪のものと同等かそれ以上にもなるであろう威力の爆発に乗って、球は遥か遠くまで飛ばされていった。
──かっちゃんと同じ個性…!?
緑谷は吃驚する。
幼馴染の爆豪の個性は派手で強力、加えて能力もあってか同等のものは見たことがない。
終綴はさも当然であるかのように、消えていったボールを眺めている。
…かと思いきや、終綴は直後に顔を歪めた。
記録を読み上げる声は、終綴によってかき消されてしまう。
「いったぁ…!何これ!痛い!」
──?
騒ぎ出す終綴。
自分の個性なのに、こうも早く反動が出るものなのだろうか。
爆豪でも反動はあるが、この程度で出てくることはない。
出てくるのであれば酷使した後、ボールを投げたくらいではこうならない。
しかし、違和感を抱く緑谷をよそに、終綴は相澤の元に走っていく。
痛みを訴えるつもりのようだ。
「ねぇこれやばいよ!めっちゃ痛い!保健室行ってくる!」
「他の競技終えてからの方がいいと思うぞ俺は」
「わかった!でも爆発の人凄いね!!私無理だもん!やばいよ!」
「煩い」
やたらと「やばい」を繰り返す終綴を相澤は黙らせた。
捕縛武器で口を塞がれているが、それを無理やり引き剥がした。
──マスクの上から塞ぐって…
緑谷は思うが、何も言わない。
「包帯っぽいけどダメ!包帯は縛る為にあるでしょ!」
「俺が知ってる包帯は、傷口を塞いだり固定したりするものだが」
「…?じゃあ、何で手を縛るの?」
「どんな状況で手を縛るんだ?」
「えっ、そんなのヤ」
「もうお前黙れ」
明らかに合理的とは言えない会話を、無理やり終了させる相澤。
むぐぐぐ!と、終綴は苦しそうに涙目で藻掻く。
再び捕縛武器で口を塞がれているが、今度は手も縛られている。
入学初日から凄いなと誰もが思ったが──、終綴はその拘束からいとも容易く抜け出した。
「もう!だめだよ、距離置かれちゃう。
変なことしないでよね」
「お前が変なこと言うからだろうが…」
痛くなる頭を抑えて、相澤は嘆息した。