第8章 想いと思い
「ね、切島はどの映画観たいんだっけ?」
きゅるん、と終綴は気づけば切島の隣に立っていた。
見上げてくるその瞳は潤んでいて、やはり鼓動が煩く高鳴る。
しかし、それと同時に、終綴の発言に驚いた。
「へっ、俺!?」
「?うん、映画行きたいって言ったら、切島が観たいのあるからって」
──そんなこと言ったっけ。
──…言ったかもしれねぇ…
メールを交わすだけでも緊張していたので、正直自分が何と言ったのかはあまり覚えていないのだ。
本来ならこういうとき、女子の意見を尊重するべきなのではないだろうか?
そうは思うも、終綴は切島の答えを待っている。
どうしたものかと思いつつ歩いて、映画館に到着した。
ショッピングモールなども併設されていて、休日だからかやはり人は多い。
映画の広告も沢山ある。
それを終綴は暫く眺めていたが────ある一点で、目を細めたことに気付く。
──これ、観たいのか?
意外だとは思ったが、切島は「これ観ようぜ!」と指差した。
「………いいね!観よう、それ!!
面白そう!」
一瞬の間があったが、すぐに笑ってくれる終綴。
気の所為だったのかなと思い直し、切島は受付に並んだ。
「じゃ、俺チケット買ってくるわ!」