第8章 想いと思い
「いいよ!私暇だし!」
満面の笑みで頷くと、切島は嬉しそうにした。
「行きたいとことかある?」
行きたいところを尋ねられて、少し困る。
──行きたい、ところ。
──実家って言うわけにはいかないからな…
自分が今1番行きたいのは実家であり、恋人や家族に会いたい。
しかし、切島を連れてそこに行くわけにはいかない。
だからといって、「じゃあカフェで話そう」となっても困る。
話す時間が長すぎると、家族について触れられる可能性がその分高くなるからだ。
──話さなくて、済む…
そこで思いついたのは、
「映画!映画観よ!!!」
特に観たいものがあるわけでもないが、映画なら、観た後にその感想などを話していれば間がもつ。
家族まで話題は飛躍したりしないだろう。
──2人で出掛けたって知られたら怒られるだろうけど…
──たまには私にヤキモキすればいいよ。
恋人のことを思い、クスリと笑う。
じゃあ、と連絡先を交換し、駅のホームで別れた。