第6章 初対面にて爪を立てろ
チンピラたちを軽くいなしながら、死柄木の様子を窺う。
──…ってか、本当にこれ、キリがないな…!!
こめかみを汗が伝う。
背後ではまだ黒い巨体(の、肉塊)が倒れ伏しているが、あれがいつ復活するか判らないのだ。
早いうちに、広場の雑魚は片しておきたい。
──ショック吸収と超再生は一応貰ったから、あの怪力さえどうにかすれはいけるんだけど…って、勝率が1番高いのは私か。
──でも、この雑魚たちと同時に来られるのは困るな…
一瞬、殺すことを考える終綴。
しかし、
──だめだ、余計な殺しは恨みを買う。
侵入者と会敵している時点で恨みも何もないのだが、そんなことを考える。
死柄木は、余裕そうな終綴の表情に苛立つばかり。
ヒステリックを思わせるようにボリボリと首のあたりを掻いた後、殺す…!と唸った。
今のこの時点で、どちらが優勢なのかは判りきっているというのに。
さてどうする、と終綴は攻撃から逃れながら思考を巡らせる。
そして、ちらっと視界に入るクラスメイトたちがいた。
逃げようと隙を伺っているのかと思いきや、こちらの戦闘をしっかりと見つめている。
峰田は恐れ慄いているようだが、蛙吹と緑谷は何故逃げないのか。
人質に取られたら足でまといでしかないのに。
見ると、リーダー格の青年もそちらを見ている。
──何故止まってる!?
──逃げろよ!!
彼らを守らねばと終綴はさり気なく緑谷たちの前に立ち塞がる。
倒れている相澤が、ちらりと視界の端に映った。
「オールマイトを殺すためには、私にも勝たなくちゃね?」
青年を挑発し煽る。
案の定それは効いたようで、彼の視線は緑谷たちから外れた。
「ムカつくなぁ…ムカつくよお前……殺す…殺してやる………!!!」
よくも脳無を!
と叫び、こちらに向かって走ってきた。
──単純で助かった。
バレないように、終綴はこっそりと安堵の息を吐いた。
背中越しに、このまま逃げろと緑谷たちにジェスチャーする。
しかし、これが良くなかった。
意識を青年から離したその一瞬。
青年は一瞬で終綴に駆け寄り、顔を掴もうとして─────
──あれ、やばいな、わたし、死ぬ?