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水面下の梟【ヒロアカ】

第6章 初対面にて爪を立てろ



たったそれだけの行動に異常性を感じつつも、終綴は挑発するように言葉を投げかけた。

「じゃあ、失敗作なんじゃないかな」
「はァ……?脳無が…失敗作………?」
「"ただのガキ"に負けてるのに、成功作とでも?
それとも、"この程度で"成功なのかな?」
「こんのクソガキ…!!
あァもう…ムカつくなぁ……!」

ガリガリガリ、と苛立ちが死柄木の指に現れる。
苛立ちを指だけで表現する彼に、終綴が思うのは精神科を紹介しなくちゃ、である。

「脳無、お前ら…こいつ、殺せ」

死柄木の言葉を皮切りに、敵たちが終綴に襲いかかった。
捕食者の目をした彼らは一瞬で距離を詰める。
相澤の元から離れた脳無もこちらへと走って来た。
迫り来る暴力の権化。

しかし終綴は、臆病ともとれる距離を怪物から取り、噴水広場の中心に移動した。

相澤を守るためではない。

その場の状況を正確に把握するためだ。
現に今、実兄は倒れ伏しているが、一瞥するだけで何も動こうとはしていない。

イレイザーヘッドが死ぬのを防ぐためと飛び出したのに、その行動の矛盾に気づく者がいるのか、いないのか──────

さっと一周、辺りを見回して、クラスメイトが建物内に留まっていることを確認する。

そして、視界の端に映るのは緑谷、蛙吹、峰田の3人だ。

何回攻撃を躱しても止むことのない追っ手に、終綴は辟易していた。

──まだやるのか…
──うーん、こっちが殺さないこと前提に好き勝手しちゃってさ………

どう足掻いても、この敵たちには自分を殺せないというのに。
そう、こちらはあくまで「ヒーロー志望」。
いくら相手が凶悪敵とは言っても、殺すことは許されないのである。
だから、こちらとしては手加減するしかない。

しかし、それでもこの敵たちでは自分を殺せない。
実力の差だ。
実家にいたときによく手合わせをしていた家族たち────否、彼の方がよっぽど強いし面倒だ。

自分は、この敵たちよりも強い人間をたくさん知っている。
脳無とやらになれば相性の悪い者もいるが、それでも自分の家族たちがこのようなチンピラたちに負けるとは到底思えなかった。

──家族自慢は後だ。



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