第2章 はじめまして
飯田は扉の方に向き直り、入ってくるクラスメイトたちにおはよう!おはよう!と1人ずつ挨拶をしているのだが、他の生徒たちは軽く会釈するだけで、会話には繋がらない。
緊張しているのだと、その表情が物語っていた。
「飯田くんも席戻りなよ、HR始まっちゃうよ!」
本当はまだ時間があるのだが、今丁度、キリが悪いところで中断させられている。
かといって本を読ませてくれとストレートに言うのも気が引けたので、やんわりと飯田を遠ざけると、そうだな!と、これまた素直な返事。
真面目すぎるのだろう、「10分前には着席しておきたい」と1人頷いて、席に戻っていった。
──なんか、既に飯田くんが委員長になりそうな予感するなぁ…
笑いを堪えながら、終綴は本に視線を戻す。
『癩病には様々な種類、名前があり、また、発症による兆候が現れるはずなのだが────』
漸く集中できる、と内容にのめり込む終綴の耳が、ドカッという不穏な音を拾った。
「おい、君は何だ!?
机に足を乗っけるなど、────!!」
即座に反応する飯田の声が聞こえる。
誰かが挑発するように言い返しているような気もするが、終綴は視線も意識も手元の本に向けたままだ。
続けて教室の扉が開く音もして、そこから何人かが話している様子も伺えたが────それも、一瞬。
低い男の声がして、教室は静まり返った。