第6章 初対面にて爪を立てろ
戦いながら、終綴はチラリと相澤を見遣る。
彼はまだ雑魚敵と戦っているところで────、そしてリーダー格の青年に肘を掴まれているところだった。
ボロ、と青年に掴まれたところから崩れていく相澤の肘。
──これがあの男の個性…!?
危険すぎる。
発動条件は判らないが、とにかく触れたら、というのは間違いないようだ。
そういえばと、マスコミが侵入してきた時のことを思い出す。
セキュリティゲートが、粉々になっていたのは記憶に新しい。
──こいつの仕業か…
そしてよそ見を続けていると、腹に衝撃が走った。
「…っ!!」
──ショック吸収の個性を持っていて良かった。
油断しすぎたか、と終綴は反省する。
数歩後に下がって巨体から距離をとると、そのまま力強い蹴りを叩き込んだ。
屈強な体がくの字に曲がり、大きな口からは大量の吐血。
胃液も混じっているのか、水っぽいのが妙に生々しい。
汚っ、と終綴は顔を顰めてから再び爪先を叩き込む。
その度に巨体────脳無からは血が吐き出され、それはまるで、──「潰した苺」のよう。
トマトや西瓜よりも、苺を潰した方が血に似た色になるというのは愛する家族たちからの受け売りである。質感は違うのだが。
それを同級生に例えたのは何とも酷い話だが、本人に知られていないのでよしとする。
そして、その様子を、緑谷たちは付近の池から見ていた。
──強い…!
戦闘訓練では気を失っていたため、緑谷は終綴の戦闘を知らない。
「流石だわ、依田ちゃん」
蛙吹は感心している。
峰田は「揺れるおっぱい…」と恍惚としていたが、蛙吹に舌で叩かれて押し黙る。
遂に、脳無が膝をついて。
「サヨナラ」
それを待っていたのか、終綴はスタンガンを思い切り脳無に撃ち放った。
トドメにしか見えない行為なのに、やはり彼女の表情は変わらない。
普段の、キラキラした笑顔の終綴はどこに行ってしまったのだろうか?
ビリビリビリ、と緑谷たちの場所からでも判るほどの強力な電気を脳無は帯び。
全身を大きく痙攣させてから、そのまま地面に倒れ伏した。
追い討ちをかけるように、終綴は軽く握っていた拳を脳無に向けてから手を広げ、爆発を誘う。
脳無は大きな爆発を起こし、肉片が飛び散った。