第6章 初対面にて爪を立てろ
──敵連合だって…………!?
黒霧の言葉に、終綴は慄いた。
何とおぞましい集団だろうか。
敵が集まってグループを?
何のために?
オールマイトを?
それなら闇討ちでもすればいいものを。
ここに来たのなら、他のプロヒーローも狙いだったりする?
…イレイザーヘッドが、殺される?
それだけは…………阻止しなきゃ。
考えに考え、回り廻り、混乱し────
終綴は、1つの行動に出た。
ダッと駆け出す。
しかしその行き先は、相澤────否、イレイザーヘッドの元だ。
対敵している、実の兄の元へと。
後ろで誰かが何か叫んでいた気もするが、何と返したのかは覚えていない。
「ッ…!!!!!」
その集団に飛び込む直前、終綴は両の手の平をそれぞれ敵の集中している所へと向けた。
そして、ぎゅっとそれを握りしめる。
「うぉっ何だ!?」
「個性が使えねぇ!!!」
「俺も使えねぇ!」
「何が起こってる!?」
「上だ!」
敵の1人が見上げて叫んだ瞬間。
終綴は無表情のまま、発射式スタンガンを撃ち放った。
強力な電気の塊が、敵たちに襲いかかる。
そのスタンガンは言わずもがな、殺傷能力に秀でるよう改造された代物。
本来なら法律で禁止されている筈なのだが、彼女にそういった倫理観は存在しなかった。
泡を吹いて倒れる敵たち。
「教師1人と生徒しかいないからって、油断して勝てるとは思うなよ」
悪魔そのものだった。
可愛らしい容姿をして、彼女の声は低く、周囲を威圧している。
その表情には、邪気しか存在しない。
いつもなら輝いているその瞳は、どろっとした闇と狂気を孕んでいる。
この世の全てを一緒に煮込んだかのような。
まるで、この程度の修羅場なら経験があるとでも言うように恐れはなく────
「終綴、戻れ」
しかし相澤は、眉ひとつ動かさずに言う。
オールマイトから戦闘訓練の話は聞いているし、今の動きからも彼女が相当な実力者であることは間違いないだろう。
入試のときの動きもこの目で見たし、個性把握テストでの結果だって記憶に新しい。
だが、それでも彼女は生徒。
教師が守るべきなのだ。
生徒にはなるべく安全な場所にいて欲しいとの願いは、自然なものと言えよう。