第6章 初対面にて爪を立てろ
「水難事故、土砂災害、火事etc.
あらゆる事故や災害を想定し僕が作ったものです、その名も────U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)!」
13号の言葉を聞きながら、終綴はキョロキョロと辺りを見回す。
──さすが雄英、設備すごいなぁ。
敷地が広いのも、この設備があるのも知っていたが、やはり目にするのと知っているだけなのとではだいぶ違う。
対人戦闘訓練の時にも思ったが、設備費はかなりの額にのぼりそうだ。
手前側には噴水広場がある。
そこを避難所として使うのだろうか。
──でもこれ、彼が来たら一瞬で…
恋人のことを思う────が、そうだこっちが規格外なのだと思い直す。
あの青年を基準に物事を考えていては、何も始まらない。
「皆さんの中にも、人を簡単に殺せる個性の人はいるでしょう。
君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない、救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
「そんじゃあまずは…」
相澤が仕切り直そうとしたところで、噴水広場の方で黒いモヤのようなものが発生した。
その黒は、悪意の塊。
それに1番早く気付いたのは終綴だった。
周囲をキョロキョロしていたのが幸いしたのか、それともその殺気に気付いただけなのか。
「先生後ろ!」
危険を察知し、声を張り上げる。
──何だあれ…!?
相澤も驚いて振り返り、目を見開いた。
どうやら、これは授業の一環などではなく、イレギュラーであるらしい。
少しずつ大きくなっていく黒いモヤから出てきたのは紛れもない、────敵たち。
それぞれ全てが殺気を放っており、その異様さに終綴は眉を顰めた。
──ここは雄英なのに、来る理由は…?
わざわざ死ににくるようなものではないのか。
それとも、その危険性を差し置いてまでも達成したい目的があるのだろうか。
──まさか、私?
嫌な予感が外れることを祈る。
自分が目的だったなら、恋人や家族にもコトが及んでしまうだろうし、それに色々と「都合が悪い」。
「何だアリャ!?」
まだ身の危険に気付いていないクラスメイトたちが呑気に覗き込んでいる。
しかし相澤の「動くな、あれは敵だ!!!!」との指示にようやく立ち竦んだ。
13号に素早く避難を言い渡し、相澤は敵の集団へと飛び込んでいった。