第6章 初対面にて爪を立てろ
バスを降りると、そこには東京ドームのような施設がドン!と構えていた。
終綴の知識に東京ドームという語彙はない為にそのような例えは思いつかなかったのだが、写真で見たことあるなぁ、と思った。
──っていうか、室内なのか。
水害もあると言っていたから、てっきり屋外だとばかり思っていたのだが。
しかしよく見てみると、当然ではあるが、特殊な造りをしているのが判る。
異常に高い天井、周囲に張り巡らされている無数のセンサー。
一見してそれと判るものもあれば、カモフラージュされていたり、隠されていたりするものもあるが、終綴には全て把握できていた。
普段から気をつけていれば、これくらい朝飯前である。
──監視カメラは移動式ロボット…だから、今は特に動いてないのかな。
──おかしな点があったら、その時に作動するタイプのものだったはず。
自身の特性上、カメラなど映像に残ってしまうものには注意し続けなければならない。
それは少し面倒だが、たったそれだけだ。
今までそうやって生きてきたのだ。
することは、何も変わらない。
しかし、終綴は忘れていた。
警察沙汰になる際証拠になるのは映像だったとしても、事が起こってしまえば、人々の記憶には残ってしまうのだということを。
違和感を1度でも植え付けてしまえば、それは中々拭うことができないのだということを。
自分が今まで失敗してこなかったのは、家族の後援があったからこそなのだと。
戦闘に入ると、自分は冷静に「なりすぎて」しまうということを。
自分の兄が、「プロの」ヒーローだということを。
自分が、「ヒーロー志望」として、雄英に通っているのだということを────────…