第6章 初対面にて爪を立てろ
そんなこんなで、仲良く(?)揉めつつもワイワイとバスに乗り込むと、飯田が途端にショックを受けていた。
「こういうタイプだったくそう!!!」
「イミなかったなー」
すかさず、芦戸がその傷に塩を塗り込む。
というのも、そのバスは前方が向き合う型の、後方が通常のバス席といった、少々特殊な形をしていたからだった。
「緑谷、今日は体操着なんだね!」
結局、終綴は緑谷の隣に座っていた。
砂藤と座席を交換したようだ。
彼はバスの1番奥の席に座っている。
「えっあ、うん、その………戦闘訓練でボロボロになっちゃったから…」
真っ赤な顔で話に相槌を打つ緑谷。
視線は泳いでいる。
楽しそうに話す終綴。
真っ直ぐ緑谷を見つめている。
バスの中間あたりでは爆豪が面白くなさそうに窓の外を眺めているが、会話を全く聞いていないわけではなさそうだ。
緑谷が戦闘服について言及したとき、フンと鼻で笑った。
そんな2人を見て、蛙吹はケロ、と笑った。
「私思ったことを何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」
「蛙吹さん!だよねっ」
割り込んで終綴が笑いかける。
蛙吹は微笑む。
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「判った!よろしくねっ蛙吹さん!」
「ケロケロ」
終綴はクラスメイトを下の名前で呼ぶのに抵抗があるようだ。
そういえば僕のときもそうだったなと、緑谷は他人事のように思う。
噛み合っているのかよく判らない会話を緑谷を挟んで紡いだ後、蛙吹は緑谷の顔をじっと見つめた。
どうやら、こちらが本題らしい。
否、先程は終綴が遮っただけなのだが。
「個性把握テストの時から思ってたの」
バスの中で、話している者は蛙吹たちしかいない。
静かな空気に響く心地よい声は、緑谷の鼓膜を震わせた。
一瞬後に、どんな爆弾を投下されるかも知らずに。