第21章 暗い場所で輝く
「寝たきりのおまえの父親…見舞いに行きたいんだが」
ヒュッ
肝が冷えた気がした。
まさか身元がバレてしまったのかと。
しかし、相澤の目には純粋な心配の気持ちが浮かんでいる。
兄の目だ。
ズキリと胸が傷んだのは気の所為だ。
そう、きっと。
───その話からのこれって、心臓に悪い…
「うーん、面会謝絶だからね。
家族以外は会えないんだ」
そもそも入院しているわけではないのだ。
前提として、その「父親」は自分たちの家にいる。
プロヒーローなど、家の中に招き入れるはずがないのだ。
家族以外会えないというのは本当だ。
小さな嘘を吐き、真実を隠す。
これが終綴の生き方だ。
変えるつもりもない。
「…そうか」
この状態になって長いと話してある。
いつ危篤に陥ってもおかしくないのだと。
実際には危篤になることなどないが、こうすれば面会謝絶が解かれることはないだろうと察してくれるのだ。
───たしか…インターンに行ってるのは緑谷たち4人だって言ってたよね。
そっちからも調べてみよう。
終綴は無理やり浮かべた薄い笑みの下で、そんなことを思った。
胸が痛むのは、「温く」なったせいだ。
また、元に戻る。
そんなことも思いながら。