第21章 暗い場所で輝く
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「個性因子が攻撃されている………?」
見知らぬ番号からかかってきたかと思えば、生徒のインターン先のヒーロー事務所だった。
そして、聞いたことの無い話を聞いた。
何だそれは。
相澤は思わず、受話器を落としそうになった。
聞いたことが無い。
滅多なことで動揺しない同僚のただ事でない様子を、マイクは心配そうに見つめている。
それに気付くと、相澤は仕事をしろと口パクで伝えた。
「いえ、俺の個性はそのようなものではないのですが─────
似たような個性を持つ生徒が1人いるので彼女にも確認してみます」
終綴は自分と似た個性だけれど。
そういえば、彼女と個性の話をしたことはなかった。
彼女の個性が発現する前に別居することになってしまったし、その後も何度か会ってはいたが母親が個性をコンプレックスに思っているのを知っていたため、触れづらかったのである。
父親は相澤と同じく「抹消」。
母親はというと、B組の物間のような「コピー」であった。
1人では何も出来ない個性なのだと自嘲気味に話していたのをよく覚えている。
ヒーローになりたいという夢をあまり応援してくれなかったことも。
否、彼女は子供たちに興味を持とうとすらしていなかった────そんな話は今はどうでもいい。
遺伝子から考えてみれば終綴と自分の個性は同じ原理であるとするのが普通だが、何があってもおかしくない世の中だ。
電話の内容を思い出し、相澤は溜息を吐いた。
───個性の強力なブースト薬に、個性因子を傷つける銃弾…
大きな事件になるぞと確信してしまう。
そして、これが敵連合とは別の動きであるということも。
───拙いな。
少し考えて、メッセージアプリを起動した。