第21章 暗い場所で輝く
***
「蛙吹さんと麗日さんは同じ事務所でリューキュウのところだよね!」
「ねじれ先輩と一緒だっけ」
「切島もインターン行ってるよね」
そんな折、ピロンと終綴のスマホがメッセージの受信を告げた。
ちょっとごめんねとポケットから取り出し、内容を確認する。
『相澤:放課後仮眠室に来てくれ。聞きたいことがある』
───聞きたいことって、何だろう。
爆豪と揉めた(?)ことなら謹慎中にでも聞いてくるはずだし、改めてその話をするとは思えない。
ほかの何かだろう。
ただ、職員室でなく仮眠室ということだから、人目を気にしているということ。第三者には聞かれたくない話だと思っていいだろう。
「おっけー!待っててね、授業終わったらすぐ行くから!」
カラフルに絵文字をつけ、送信するとすぐに既読がついた。
返信はこない。了解、の意味だろう。
そういえば、この兄はいつから素っ気なくなったのだろう。昔一緒に暮らしていた頃は、優しかったような気がする。
歳が離れていたせいで一緒の時間が多かったわけではないけれど、何となく、そんな気がしていた。
兄はヒーローだ。
自分の身を挺して生徒たちを守ろうとする姿はUSJでも合宿でも見たけれど、なら、彼にとって「1番」「優先するべきこと、もの」は何なのだろう。ふと、思うことがあるのだ。
そう思った時に浮かぶ答えは、やはり「生徒」なのではないかと終綴は思う。
───なら、家族を守ろうとする私とよく似ている。
自分以外の人間を1番に考えるところが、特に。
───そう、私たちはよく似ている。
───本気で守りたいもののためなら、手段なんか選ばない。
───それなら…私と、相澤消太が一緒に……あの家を、出ていたら?ずっと一緒にいたとしたら、私たちはどうなっていただろう?
自分にとっての「大切なもの」は、それでも変わらないのだろうか。
分からないのだ。
今までなら何とも思わなかったはずの仲間たち以外からの目に、信頼に、胸が痛むことが増えた。
敵連合であるはずの彼も、なぜ自分に好意的なのかわからない。
自分の正体を知っているなら、尚更。
自分の正体を知れば、皆爆豪のようになるのではないだろうか。
───雄英になんて、入らなければ良かったのかな。
───帰りたい…家族に、会いたい。