第21章 暗い場所で輝く
「コスチュームを纏って街に出れば俺たちはヒーローだ!!
油断はするなよデクくん!」
「はい!ルミリオン!!」
こんな言葉を交わしてから、5分足らずで。
ドクンッ……ドクン
緑谷の心臓は、いやに大きく音を鳴らしていた。
写真で見たばかりの顔。
冷たい瞳に赤みがかった茶髪。
ペストマスク。
「うちの娘がすみませんね」
路地裏から飛び出してきた女の子とぶつかり、受け止めると彼女の後ろから青年が出てきたのだった。
「遊び盛りで、怪我が多いんですよ…困ったものです」
女の子の手足に巻かれている包帯について言っているのだろう。しかし、女の子の様子は異常なくらいだ。震えている。
「あの…娘さん、怯えてますけど」
治崎の顔が曇る。
「叱りつけたあとなので」
ヤクザというと言葉遣いの荒いイメージだったが、彼は違うらしい。
インテリヤクザというやつだろうか。
「こんな小さい子が、声も出さず震えて怯えるって普通じゃないと思うんですけど」
やめろ。行こう。
そんなミリオの心の声が聞こえてくるようだ。
警戒が強まることを恐れているのだろう。
しかし、緑谷の考えは違った。
───ヒーローなら、怯えた子をやり過ごすほうが不自然だ!
「この子に、何をしてるんですか?」
夥しい包帯の数。
怯える子供。
明らかに、様子がおかしい。
遊び盛りでよく転ぶといっても、度が過ぎている。
「……ふぅ」
治崎はふっと顔を緩めた。
険しかった顔が、急に穏やかになる。
「全く、ヒーローってのは人の機微に敏感ですね…わかりました
恥ずかしい話なので、人目に付くのも嫌ですしこちらに来て貰えますか」