第20章 水面下での謁見と
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体育祭には、息子を見に行くだけのつもりだった。
息子がプロになっても1番を取れる、と確信するための。満点を確信した答え合わせのようなものだ。
しかし、第1競技を見ただけでその自信は揺らいだ。
息子が1位でなかっただけでなく。
結果4位としてのゴールだった女子生徒の潜在能力に、ゾッとしたからだ。
障害物としてのロボットに対する破壊力。
遮蔽物を上手く使い、他者を蹴落とそうとする冷酷さ。
地雷ゾーンでの判断力や綱渡りゾーンでの身体能力など、様々な分野で秀でていた。
それに加え、ゴールしても全く疲れた様子は見られなかった。
体育祭という絶好の自己アピールの場で手を抜くとは考えづらいが、もし、そうだったとしたら。
パワー系だと思われる強個性。
オールマイト。
自分では決して超えることのできない壁。
───冷。
自分の弱点をカバーするためにした、「時代遅れの」個性婚。
兄弟たちとは関わらないようにし、苦しい修行を強いられてきた焦凍。
自分の子供がNo.1になれるようにとの理由だけの行動は、全てエゴだと言われてしまえばそれまでだ。
けれど。
ヒーローになるにあたって、個性の面において焦凍に弱点らしいものは存在しない。
焦凍本人だって、プロヒーローになりたがっている。
だからこそ、1番になれるようにと。
たとえ息子の目指す存在が、自分ではなかったとしても。
自分では実力で超えられない壁を、息子が目指そうと憧れていたとしても。
それでも構わない。
自分の個性で頂点を目指すには、リスクが高すぎる。獲る前に、体が壊れてしまうだろう。最悪、死んでしまうかもしれない。
だから、だから。
なのに。
───あの女は、何者だ。
「職場体験の指名は確か…上限2名だったか」
え、と驚くサイドキックたちをよそに。
エンデヴァーの指は滑らかにキーボードを叩き。
職場体験指名の募集が始まってすぐ、それを送った。