第20章 水面下での謁見と
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パチリ
終綴は、小鳥のさえずりに目を覚ました。
夜明けが近いようだ。
締め切ったカーテンの隙間から、僅かに夜明けの藍色が覗いていた。
───そろそろ学校も復帰しなくちゃ。
何日か学校を休んだけれど、さすがにもう行った方が良いだろう。
家業の手伝いも、暫くは必要なさそうだ。
枕元から携帯を取り出す。
寝る直前、浮かび上がった嫌なメッセージが夢であることを願う、────けれど。
「…ばか」
電源を入れ、メッセージアプリを起動する。
どうやら昨晩のメールは見間違いではなかったらしい。
『わかった』
それだけを返し、携帯をしまう。
気をつけてねなんて言う必要はない。
彼なら、絶対に大丈夫だから。
ベッドからゆっくりと起き上がり、クローゼットの扉を開いた。
仮免試験以降1度も着ていなかった制服に着替え、またベッドの縁に腰を下ろす。
まだ時間はあるが、準備は早く済ませておきたかった。
準備はなるべく早めに済ませ、ギリギリに着く。
それが、終綴の習慣になりつつあることだった。
ふう、と息を軽く吐いてから、また終綴は携帯を取り出す。
チャラ、と華奢なキーホルダーが揺れた。
終綴が学校にというか、あまり部屋から出ていない間、麗日を中心として、女子達から今日はどんなことがあったとか、そんなメールを毎日もらっていた。
ざっと目を通し、呟く。
「ヒーローインターン、ね…」
ふぅん、と頷く。
───バイトのようなものか。
クラスメイトも行くのだろうか。
職場体験で得たコネを使ってとの話だから、自分が行くとしたらエンデヴァーの事務所になるのだろうか。
「エンデヴァー…か」
ありがとうと律儀に返信をしながら、終綴はエンデヴァーとの会話を思い出していた。