第20章 水面下での謁見と
戸惑っているうちに、
「触るな」
バツン
コンプレスの左腕が弾き飛んだ。
「ってえええ!?」
コンプレスはあまりの痛さに耐えきれずその場に尻から落ち、そしてオーバーホールは例の如く身体を掻き毟る。
仲間の続く怪我に耐えかねたのか、死柄木が動き出した。
その五指がせまる。
コロン、と小さな何かが床を転がった。
青年の脳裏を過るのは、とある少女の言葉。
大切で大切で、自分が最も信頼している仲間。
──あの死柄木って奴がお兄ちゃんに触れた瞬間、腕が壊れたの。個性何かはわからなかったけど…やばいよ
考えるまでもなかった。
「盾っ」
天井に向かって叫ぶ。
すると青年と同じでようなマスクをした男がどこからともなく落ちてきて、言葉通り、盾になった。
ぼろ、と死柄木の触れた場所が崩壊していく。
「うぐっ…!」
苦しそうに男は呻くが、崩壊は止められず、そのまま粉々になった。
「危ないところでしたよ、オーバーホール」
頭上から声がした。
仲間の声ではない、と死柄木は警戒しバッと後ろに下がる。
盾になった男側といい、他にも青年の仲間がここにいるようだ。
それと同時に、「面接会場」の壁をぶち破りながら現れたのは何人もの男たち。
オーバーホールと同じようなペストマスクを着けている。
もしかしなくても、組の仲間だろう。
「なるほど、ハナからそうしてりゃ幾分か分かりやすかったぜ」
漸く現れた仲間の登場に、オーバーホールは遅いぞと ごちている。
白いコートの男は、左手に黒光りする拳銃を携えていた。これが彼の得物なのだろうか。
彼はオーバーホールの隣に立ち、敵連合たちを見据えた。
「1発外しちゃいやしたが、即効性は充分でしたね
あいつも飛び回ってるし、あと少しだ」
盾になり血みどろと化した仲間には、見向きもしない。
血溜まりの中には、ペストマスクだけがプカプカと浮いていた。
「穏便に済ましたかったが、こうなると冷静な判断を欠く」
ぴらりと1枚の紙が宙を舞い、床に落ちた。
そこには10桁の数字が並んでいる。
「冷静になったら電話してくれ」