第20章 水面下での謁見と
「計画の推敲に莫大な金が要る
今も金を集める準備はしているが…それは将来使えるようになる金だ。今じゃない
だが、今と言っても時代遅れの小さなヤクザ者に投資しようなんて物好きはなかなかいなくてな
ただ名の膨れ上がったおまえたちがいれば話は別だ
俺の傘下に入れ、おまえたちを使ってみせよう
そして俺たちが次の支配者になる」
ようやく話し終えたのか、客が黙ると、死柄木はただ一言、帰れと命じた。
俺「たち」の部分に違和感を覚えたものの、そこに突っ込むほど彼に興味があるのではないらしい。
長い演説に痺れを切らしたのか、サングラスの男は自らの武器である巨大棒磁石を掲げた。
被せていた布をするりと解き、N極を客人に向ける。
「何にも縛られずに生きたくてここにいる…私たちの居場所は私たちが決めるわ!!」
オーバーホールはS極の磁気を帯び、磁石に吸い寄せられていく。
敵連合の面子は何もしない。
彼一人で充分だと実力を信頼しているのだろう。
しかし、彼に引き寄せられる直前。
オーバーホールは、手ぶくろを外していた。
そしてその手で彼の腕に触れ、
バツン
風船が割れるかのような勢いで、彼の上半身は弾けた。
ぼたぼた、と鮮血が落ちて床を染める。
あまりの一瞬の出来事に、オーバーホール以外の面子は呆然とするだけ。
「先に手を出したのはおまえらだ 」
オーバーホールがバランスをとりながら呟くと、ようやく、
「マグ姉ー!!!?」
と、彼のあだ名だったらしい名前が叫ばれた。
「ああ汚いな…!! これだから嫌だ」
彼は発作を起こしたように、ゴシゴシと服の上から身体を擦っている。
弾けた際に、自分に降りかかった他人の血液が嫌でならない様子だ。
顔や腕には、ブツブツと蕁麻疹のようなものが現れている。
敵連合から襲われる心配を微塵もしていない。警戒していないのか、それとも相手にすらならないと思っているからなのか。
しかし、敵討ちのつもりだろう、地を蹴ってコンプレスが駆け出した。
死柄木は待てと制止をかけるが、それでコンプレスは止まらない。
実力は確かなはずの仲間が、一瞬にしてやられたのだ。野放しにしておけるはずがない。
──こいつやべェ、俺の圧縮で… 閉じ込める!
手を伸ばすが、しかし個性がなぜか不発に終わる。