第20章 水面下での謁見と
「いわゆるスジ者さ…死穢八斎會。その若頭だ
俺が見た写真には、お前の傍には常に似たような格好の奴がいたはずだが…今日は居ないのか」
青年はそれに答えない。
「そんな事はどうでもいい
それより…あいつは居ないのか?
荼毘、とかいう…火傷跡の」
「は?荼毘?
………知り合いか?」
極道に知り合いがいるなど初耳だが、と死柄木は訝しむ。
しかし、青年は首を横に振った。
「顔すら知らない仲だ。
だが、どうやらうちの組の人間が世話になったみたいでね…礼をしようかと」
「は?世話?」
なんの事だと死柄木はただただ首を傾げるばかりだが、青年はそれ以上何も言わなかった。
居ないならいい、と言いたいらしい。
「はァ…極道ってのは、みんなこんなに態度がデカいのか?」
自分のことを完全に棚上げしそう呟く。
何人かは「お前が言うか?」と言いたげに首を傾げていたが、死柄木はそれを完全にスルーする。
そんな中、サングラスの男はほんとに極道なの!?ねぇ!?と声を高くしている。
普段関わりのない連中なだけに、テンションは上がるようだった。
自分たちと何が違うのかわからないといった様子の女子高生に、黒いベストを着た男────コンプレスはこと細やかに説明を施した。
オールマイト隆盛後、それまで裏社会を取り仕切っていた団体がその時代を終えたこと。
しかし残党や生き残れた者たちは「敵予備軍」として監視されながらも生き延びているということ。
「ま、ハッキリ言って時代遅れの天然記念物さ」
そうコンプレスは締めくくった。
間違っちゃいない、と青年も否定しない。
「で、その細々ライフの極道くんがなぜウチに?
あなたもオールマイトが引退してハイになったタイプかしら」
漸く落ち着いたのか、自身の得物である棒磁石を撫でながら青年に問うたのはサングラスの男。
「いや」
表情もまったく動かさずに青年は否定した。