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水面下の梟【ヒロアカ】

第20章 水面下での謁見と



郊外の廃倉庫。
吹き付ける風だけでも不気味さを感じさせるその場所に、青年は立っていた。
とある男に連れられて。

「見るからに不衛生だな…ここが拠点か?」

青年は不快そうに問う。
潔癖なのだろうか、両手には使い捨てのゴム製手袋を着用し、ペストマスクもつけている。
鳥の嘴のような形のそれは禍々しく、どんよりとした辺りの空気にはピッタリだ。

そのせいで顔の半分は見えないが、精悍な顔立ちであることは間違いないだろう。
涼しいというより冷たい瞳をした青年は、その場の空気をも凍らせることができそうなほどだ。
男はそんな空気を気にせず、ああ!と朗らかに答える。

「いきなり本拠地連れてくかよ?面接会場ってとこ」
「勘弁してくれよ。ずいぶん埃っぽいな… 病気になりそうだ」

これでもかというほどに重装備をしているのに、青年は廃屋の清潔さばかりを気にしている。

「安心しろ、中の奴らはとっくに病気だ」

皮肉ともとれる言葉を男は返しながら、その扉を思い切り開いた。

「話してみたら意外と良い奴でよ!! おまえと話をさせろってよ! 感じ悪いよな!!」

なぁ!と、中で待っていた人物たちに男は話しかける。
視線は、黒い外套を羽織った男に向いている。
その男は、全身隈無く手のような物体をつけていて────そう、彼の名は死柄木弔。
男──トゥワイスの矛盾した言葉には誰もつっこまず、しかし死柄木はニヤリと笑った。
青年の存在に、心当たりがあるようだ。

「とんだ大物連れてきたな…トゥワイス」
「大物とは…皮肉が効いてるな、敵連合」

青年は淡々と返す。
周りの反応を見ながら、青年は静かに視線を張り巡らせた。誰か、もしくは何かを探しているのだろうか。
一人ひとり、相手の顔を確認している。

「なに!?大物って有名人!?」

サングラスの男が驚く。
彼は青年を知らないらしい。
死柄木は「先生に写真を見せてもらったことがある」と言った。

この場所ではやけに、人の声がよく響く。



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