第19章 フクロウは舞い降りる
「……そうね」
形だけでもと首肯すると、荼毘はこれ、と1枚の紙切れを寄越した。
「何これ…アドレス?」
見慣れない並びだが、アットマークとその後の並びで想像がつく。
しかし、これは何だ。
こちらは「ヒーロー志望」。
相手は敵連合の一員。
それも、雄英生から見れば相手は何度か交戦しているはずの敵対組織だ。
「ああ、俺のだ。登録してくれ」
「いやいや待って、俺のって…
自分がしてることわかってるの?」
呆れて首を振る。
しかしここで、ピロンと終綴のスマホが着信を告げた。
『君、今どこにいるんだ!?
早くしないと説明が始まってしまうぞ!』
飯田からだった。
ゲッと顔を今度こそ歪めると、覗き込んできた荼毘が爽やかに笑った。
敵らしくない、年相応の好青年に錯覚してしまったのを許して欲しい。
「あぁ、悪かったな
これについては試験終わるまで俺がここで待つ……じゃ、頑張れよ」
「や、時間かかるだろうし…」
「俺のことは気にするなよ
終綴の為なら待っていられる、俺の話も聞きたいだろ?」
行ってらっしゃい、だなんて呑気に背中を押してくる。
彼の個性は掌から噴射される炎のはずなのに、何故だか警戒する気になれなかった。
こういう所を「温い」と言われたのだろうなと思いつつ。
ハイハイと軽く答え、終綴は試験場へと戻って行った。
───ま、あいつと敵対するかどうかは…死柄木次第ってとこか。
死柄木は自分を恨んでいるらしいけれど。
家族たちは自分の存在を上手く隠すだろう。
荼毘も死柄木には何も話していないようだし、あの組織も一枚岩ではないのかもしれない。
万一死柄木に知られたところで、自分が負けるとは思えないのだが。
さてどうなるかな、と終綴は楽しそうに笑った。