第19章 フクロウは舞い降りる
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風呂を手早く済ませ部屋に戻ると、階下から声が聞こえてきた。
どうやら皆戻ってきたらしい。
終綴は耳が良い。
それも、尋常ではないレベルで。
今の家族たちに拾われた時、当初終綴の個性はそれだと思われていた。
しかし、彼がそれを違うと言い、終綴本人も証明してみせたために納得されたのだが。
───普通じゃない、自覚はある。
環境がそうさせたのだ。
そうでなければ、自分はとっくに何処かで野垂れ死んでいた。
そして、この能力と言うべきか、それと個性。
この2つが噂になっていなければ、彼と出会うこともなかっただろう。
「オール・フォー・ワン…」
死柄木弔の師だという、敵のトップに立っていた男。
自分はあの男の劣化個性だ。
周囲は恐らく「イレイザーの上位互換」もしくは「物間のコピーと同じ」くらいに思っているのだろうけれど。
1度、会ってみたかった。
自分と似た個性を持つ男に。
───……警察とかに紛れ込めばいけるかな。
いやしかし、監視もいるのではないだろうか。
───監視と見張り、足止め…最低でも私の他に3人は必要だ。
───無理か。
無理ではないのだろうが、それにかかる労力に見あった対価を得られるとは限らないし、何よりリスクが高い。
ゆるゆると首を振り、ボスンとベッドに沈みこんだ。
『会うことになった。
どうなるかは奴次第だ』
そんなメッセージが、スマホの画面に浮かび上がり、それから消えた。
闇の中に、馴染むように。
終綴はそれに既読も付けず、そのまま浅い眠りについた。
いつになったら熟睡できるのだろうか。
そんな事を思って。