第19章 フクロウは舞い降りる
***
「ふー…今日はさすがに疲れた」
時間はまだたっぷりあったが、寮には居たいところだった。
確認のメールを少年と恋人のそれぞれに送り、すぐに服を着替える。
緩い部屋着に着替えると、ゴロンとベッドに寝転がった。
時計を見ると、皆の下校時間まではまだ余裕がある。
「………風呂でも行くか」
そうと決まれば行動は早く。
クラスメイトたちと鉢合わせるのは避けたかった。
入浴は、人間が無防備になる時間のひとつだ。
だから終綴は他人と風呂に入るのが苦手だったし、クラスメイトたちとはできる限り時間をずらしていた。
───特に警戒すべきは爆豪、峰田とお兄ちゃんくらいかな?
───あとは緑谷と、轟…?
───女子は…強いて言うなら、蛙吹あたりかな。
着替えとタオルを持ち、廊下を歩きながら終綴は思う。
これが多いのか少ないのかはわからない。
今のところスパイでも内通者でもないけれど。
突然雄英が全寮制にしたのも、生徒に内通者がいるのではとの疑いがかかっているのではないかと終綴は思っていた。
───荼毘と内通者がきちんと知り合いなら、私に言ってくれるはずだけど…
先日登録した連絡先を思い出す。
仮免試験の日に、会場に来ていたのだ。
当然のように押し付けられた連絡先だったが、知っておいて損はないだろうと一応登録したもの。
こちらのも教えはしたのだが、するとどうだ、1日に1通は必ず送られてくる。
終綴は変に律儀な性格のせいか返信してしまうため、メッセージのやり取りはその日以降ずっと続いているのだが。
今朝届いたメールは何だったか。
『イカレJKが終綴と連絡を取りたがってる』
だったような気がする。
何と返せば良いのかわからず、後回しでいいかと放置しているのだが。
というか、気付くと荼毘は自分を下の名で呼び捨てをしてくる。
親しくなったつもりはないのだが、合宿で既にそう呼ばれていたことを終綴は完全に忘れていた。
荼毘の行動を、敵連合のメンバーには知らせていないらしい。
いや、あいつには知られたとか何とか言っていたから、知っている者もいるのか。
溜息を吐いた。
敵連合の一員と自分が、何故メールを交換するまでの仲になってしまったのだろうか。
仮免試験の日のことを、終綴は思い出していた。