第19章 フクロウは舞い降りる
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ふわり。
降り立ったそこは、ある建物の屋上だった。
建物の中と外とを結ぶ扉をよく見ると、内側に立ち入り禁止のテープが貼ってあるのがわかる。
終綴は、屋上が好きだった。
相手からは気付かれずに、周囲を観察できること。彼と出会った場所であること。
個性を発揮しやすい場所であること。
その全てが理由だ。
手すりから身を乗り出して、街を見下ろした。
まだ昼過ぎだからか、人通りは多く、賑やかに見える。
かと言って混雑しているわけでもない。
街中を歩いているのは、買い物中であろう主婦たちと学校をサボっているのだろうか、疎らに見受けられる学生達、そして、パトロール中のヒーロー。
しかし、終綴は思わずそのヒーローに、げっと声を上げた。
若くしてその実力も人気もうなぎ登り、名実共にランク上位の男────ホークス。
直接的な関わりはないものの、注意しておくべき人物だ。
そう言えば彼はその実力にも関わらず、神野事件において呼ばれてはいなかったはず。
あの事件は後に大きく様々なメディアで取り上げられ、終綴も調べ纏めたりした。
しかし、どこを探してみても彼の名前は載っていなかった。
何かをしていて忙しかったのか、単に呼ばれなかっただけなのかはわからないけれど。
でも、だ。
───仲間を大切にしない奴なんて、好きじゃない。
「…元々、世間から"ヒーロー"なんて呼ばれてる連中は好きじゃないんだけどさ」
国民全員に問い質したい。
"お前は本当に、彼らをヒーローだと思っているの?"
と。
世間のヒーローが、必ずしも国民全員のヒーローであるとは限らない。
例え世間が敵だと呼ぶ者だったとしても、ある人にはヒーローになり得るかもしれないのだ。
───私は、"ヒーロー"を助けたい。
力に、なりたい。
もっと、強くならなくては。
彼らと、生きていくために。