第19章 フクロウは舞い降りる
***
「依田さん…大丈夫?」
昨日の今日で心配になり、緑谷は登校前に依田の部屋をノックしていた。
返事はない。
もう登校したのだろうか。
普段遅刻してばかりだから、それは考えづらいけれど。
「依田さん?」
もう1度ドアを叩くと、はい、と小さな返事があった。
「今日、学校……来れる?」
無神経に、一緒行こうとは言えない。
爆豪は謹慎処分を食らっていたが、だからといって傷は簡単に癒えるものでもないのだろう。
女性のことはよくわからないけれど、怖い思いをしたのだろう。
敵と戦う時には恐怖しているように見えなかったけれど、彼女にも繊細な一面があったのだなと思う。
「ごめん…休むね。
お兄ちゃんにも、ごめんねって言っておいて」
やはり小さな声。
わかったよとだけ返し、緑谷は寮から出た。
爆豪は、寮の掃除を命じられているらしい。
共同スペースに行くと、掃除機を丁寧に扱っている幼馴染がいた。
今回は始業式があるらしい。
ないものとばかり思っていたが、やはり立て続けに起こった襲撃が影響しているのか、今回ばかりは開くようだ。
校長の話は長かったが、要約すると「オールマイトの引退により、これからのヒーロー社会は多くの問題を抱えるだろう」とのこと。
しかし、その話の中で、「ヒーローインターン」というものが生徒たちの心に残った。
耳にしたことがないらしく、皆初耳のようだ。
そして、やはりというべきか、それはホームルームにおいて言及された。
「ごめんなさい先生、いいかしら」
そう言って静かに手を挙げたのは蛙吹。
「始業式でお話に出ていた、ヒーローインターンってどういうものなの?」
他の生徒たちも気にする様子を見せている。
それについてだが。
相澤はそう前置いて、入っていいぞとドアに声をかけた。
「校外でのヒーロー活動のことだ。
以前行ったプロヒーローの下での職場体験、その本格版だ」
入ってきたのは、2人の男子生徒と1人の女子生徒。