第19章 フクロウは舞い降りる
終綴が部屋に戻っていくのと同時に、隣室の扉も開いた。
「んだよバクゴー…どうし、って緑谷!?
センセーも!?何かあったのか!?」
眠そうに目を擦っていたのが、すぐにぱっちりと開かれる。
ただならぬ空気に気付いたのだろう。
「切島はもういい、寝ろ。
緑谷も助かった。
………爆豪、お前はこっち来い。少し話を聞きたい」
爆豪が、付き合ってもいない人間に手を出す、それも無理矢理だなんて、それは絶対にないと相澤は思っていた。
だからこその違和感。
この生徒は、ただナンバーワンだけを求めて努力している。
だからこそ。
だからこそ、聞かなければならないと思った。
「なぁ爆豪。
俺は、お前が無理にこんな事をするような奴だとは思ってない………終綴と、何があった」
誰もいない、共同スペース。
そこは、やけに静かだった。
しかし、爆豪も静かだ。
頑として話そうとしない。
「…………………」
「爆豪」
「……何もねえ」
あくまで話す気はないらしい。
こんな時、ブラドなら聞き出せるのだろうか。
これは、自分が生徒との信頼関係を結べていないからなのだろうか。
「……わかった」
悔しいが、彼に話す気がないのならこれ以上訊いても無駄だろう。
もうこんなことはするなよと言い残し、相澤は寮から出ていった。
爆豪が唇を噛み締めている、その事実には気付かないままに。