第19章 フクロウは舞い降りる
「デクどけや!!!!
そいつは何か隠してやがる!!」
「何言ってんだよ!?
隠し事なんてあって当然だろ!!?
無理やり聞き出そうとなんてするなよ!!」
「てめぇとこいつは違ぇだろ!!
一緒にすんな、コイツはっ……!!!」
そこまで言ったところで、爆豪は思わず口を閉じた。
視線は緑谷の後ろに固定される。
「修羅場か…?
元気のよろしいことで…………」
苛立ちを隠そうともしないその声に、緑谷も竦み上がった。
「相澤先生っ………!!」
「とっくに消灯時間は過ぎてるんだが…
…………………おい終綴、お前この手首どうした」
3人の視線が、終綴の手首に集中する。
それで漸く気づいたのか、終綴はサッと自分の両手を背中に回した。
「……………えっと、」
乱れた服、そして髪。
手首の痕。
何がここで起きたか、容易に想像がついた。
「…合意か?」
「そんなわけっ……ない、でしょ…っ」
泣きそうな表情で、終綴は俯いた。
余程怖かったのだろう。
その肩は、ひどく震えていた。
───爆豪が無理やりするような奴ってのは信じ難いが…こいつは体調もあるし、昨日今日で行為に及ぶとも思えない。
「爆豪、女子相手にそれは駄目だろう。
……………これから2日間の謹慎な」
「っ………うす」
悔しそうに唇を噛み締める。
この状況下で、自分の思うようにことを進められるのはどう考えても終綴だろう。
自分には分が悪い。
聡い爆豪は項垂れた。
「で、緑谷、お前はなんでここにいる?」
念の為と訊く。
状況からして、緑谷が終綴を庇っていたようだったし、心配ないとも思うのだが。
「助けてって…メール、送った、から…」
何となく察したらしい。
はぁ、と溜息を吐いて、相澤は妹に優しく言った。
「早く部屋に戻れ」
終綴は、うん、と小さく頷いた。
「緑谷……ごめんね、ありがと、」