第18章 その瞳は何を映す
***
「フクロウとは会えたのか」
煙草を吸う、初老の男が笑った。
喋るのに合わせて、煙がゆらゆらと揺れている。
何故か拳銃で火をつけていたが、ライター代わりなのだろうか。それともライターが拳銃型なのか。
物騒なものを身につけている割に、彼の操作するスマホのカバーは兎耳のついた物だ。
意味がわからない。
「おかげでな」
答えたのは黒髪の青年。
男の妙な所持物には何も突っ込まない。
理解があるのか、単に興味が無いのかはわからないが。
灰がスマホに落ちても知らねぇぞと小さく呟いている。
………興味が無いわけではないらしい。
そんな青年は、焼け焦げたような皮膚を繋ぎ合わせた姿をしているのが特徴的だ。
敵連合に入った甲斐があったよと零した。
「はは。…で、どうだった?誘ったんだろう」
「断られた。敵意剥き出しだったよ
想像はしていたが、本人から言われるとショックがでかい」
そうだろうなと男は頷く。
青年はというと言葉と裏腹に、薄く笑みを浮かべている。
本当にショックなのだろうか。
「ま、正直なところ、彼女がこっちに入ったとしても…あれだな、俺たちのリーダーはキレるだろうよ
アンタもそう思うだろ?黒霧さん」
青年の後ろに呼びかけた。
振り返るとそこにいたのは、バーテンのような服装をした黒い靄だった。
居たのかよ、と青年は悪態を吐く。
気付いていなかったようだ。
その靄は、闇と同化していて、目を凝らさなければその姿は確認できない。
「話が読めないのですが、フクロウとは…?」
黒霧と呼ばれた男は、そのフクロウなる者を知らないらしい。
煙を吐きながら、男は青年を見た。
どうやら自分が答えるしかないらしいと悟った青年は、渋々口を開く。
「死穢八斎會のフクロウ…あんたも知ってるだろ」