第18章 その瞳は何を映す
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仮免許を取得してからの生活は、あまり今までと変わらなかった。
個性伸ばしの特訓やトレーニング室を借りての実戦、その他普通科目の講座など。
しかし、終綴はクラスメイトと比べると自主練を減らしていた。
聞けば、終綴の父親は植物状態なのだそう。
1人にしてくれないかなと言う終綴には、確かに以前のようなハイテンションさはどこにもない。
「終綴ちゃん、大丈夫かな」
「依田が元気ないとなんか心配だよね」
「部屋の電気消えるのも早いような…」
「昨日自主練終わったあと声掛けてみたけど、返事はなかったぞ」
「…………」
「…………」
切島と上鳴は、黙っていた。
終綴が心配なのはクラスメイトと同じだ。
しかし、以前、終綴は父親について辛辣だったのを2人は覚えている。
植物状態になって心配するのは当然だと思うけれど、あの時点で確か彼女の父親は寝込んでいた。
今更になって心配するのだろうか。
それとも、ここ数日で心変わりした?
────いや、まさか。
人の気持ちは数日くらいでは変わらない。
加えて切島は、爆豪の言葉が頭から離れないでいる。
真意を聞いても、はぐらかされるだけだから、切島としてはどうしようもないのだけれど。
そして爆豪はというと、
───何っなんだよアイツ…クソッタレ…
何度部屋を訪れても返事をしない終綴に、歯ぎしりをしていた。
仮免試験において彼女が見せた青い炎。
あれは、合宿でツギハギ男が見せたものと同じだ。
合宿で、彼と終綴が親しそうに話していたのも確認している。
音声は聞こえなかったけれど、決して殺伐とした空気ではなかった。
相澤やオールマイトに、相談しようかと思ったこともある。
しかし、混乱を招くだけだ。
彼女は遅刻することを除けば優等生で、成績も抜群。
個性だって強力なのだ、確かな証拠を掴んでから話す方が良い気がした。
───オールマイトは嘘下手そうだし、なら担任の方が適任だが。
少しずつ、少しずつ。
終綴には、疑いの目が向けられていた。
そして。
終綴は早くから寝ていたのではなく────…