第18章 その瞳は何を映す
「…………え?」
緑谷がそう零したのも、無理はない。
敵の襲撃直後、その方角へ走っていく終綴が見えた。
相手がプロヒーローだとしても、彼女なら足止めできる。
そう思い、避難を続行させていたのに。
急に熱気がと思いそちらを振り返ると、ギャングオルカたちのいた場所は、青い炎に包まれていた。
なぜ。
どうして。
そこにいるのは、終綴ただ1人。
思い出すのは、合宿での襲撃。
青色の炎。
救えなかった幼馴染。
───敵連合。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっっつい!」
「焼かれる!!!」
聞こえてくるのは阿鼻叫喚。
離れたここからでも火傷しそうな熱気だ。
包まれているのなら、一溜りもないだろう。
───やりすぎだよ依田さん…!
───ていうかその炎は何!?
考える時間も与えてはくれない。
現場とは、そういうものなのだと、過去の襲撃から緑谷たちは学んでいた。
そして、ヒーローは何があっても、人を殺してはならない。
例え、相手が敵だとしても。
「…っ依田さん!!それじゃ死んじゃうよ!!!」
緑谷の声と同時に。
巨大な氷の塊が、ギャングオルカに迫っていた。
それに気付いたのか、終綴は炎を止める。
「依田さん、今のは…!?」
「さっき人から借りたの!
避難と救助はどうなってる!?」
───ツギハギの人と、依田さんには面識がない。
───さっきってことは、一次試験のことか?
───いや、今はそれよりも試験だ。
「緑谷!依田!
避難手伝うよ!」
尾白・芦戸・常闇がこちらに来た。
彼らはツギハギの男との面識がないためか、何も口を挟まない。
彼らは都市部に行っていたはずだが、そちらの救助は完遂したのだろうか。
「よし!
戦闘は轟に任せよう、夜嵐って人も今こっちに向かってる!」
終綴は再び、蛙吹たちの方へ戻って行った。
今度は、クラスメイトたちと共に。