第18章 その瞳は何を映す
ゾワリ
終綴とギャングオルカたち敵集団の接触直前。
寒気がした。
殺気とでも言うのだろうか。
本能的に、拙いものを察知した。
相澤の心中に、警報音が響き渡る。
───敵襲か!?
思わずバッと立ち上がる。
しかし、異変は何も見当たらない。
気の所為なら良いのだが。
警戒は解かないままで座り直す。
「なぁイレイザー」
いつの間にか隣に座っていたジョークが、珍しく神妙な顔をしている。
「あの子、お前のクラスの生徒だろ?
何者だ?」
彼女の視線の先には終綴。
「………体育祭来てたならわかるだろ。
トーナメントにも一応残ってた」
「いや、それはわかる。
依田終綴だろ?
そうじゃなくて…体育祭の時と、空気感変わってないか?」
それは相澤も感じていた事だった。
やけに落ち着いているというか。
ハイテンションな終綴がどこにもいない。かといって、暗くもない。
どこか遠くを、ある1点だけを見つめている気がする。
それ以外は、どうでもいいというような。
帰ってきたのは昨日の夜で、本当にギリギリまで用事があったらしい。
何かがあった、というのはほぼ確実。
だが、それが何かわからない。
今朝バスが出発する前にも、どうだった、とそれらしい探りを入れてみたけれど。
返ってきたのは、「いつも通りだよ」という返事のみ。
───だが、今の感覚…終綴はやっぱり…
手が震える。
まさか。
そんなはずがないのに。
そうであってほしくない。
そして、そんな相澤の願いを嘲笑うかのように。
ギャングオルカとそのサイドキックを、青い炎が包み込んだ。