第18章 その瞳は何を映す
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控え室で試験終了を待っていると、クラスメイトで自分の次に来たのは轟だった。
体育祭のせいでばっちりマークされていると思っていたが、そうでもなかったのだろうか。
「轟ー!こっちこっち!」
「お」
ブンブンと手を振ると、的を外してからこちらにやって来た。
「早ぇな。…お前1人か?」
隣の椅子に腰掛ける。
ふわりと微笑む表情は温かく、やはり体育祭以前とは別人のようだ。
うん、と終綴は頷く。
「分断されたみたいで、結構苦戦してるっぽい」
傑物の人、かっこいいねぇ強いねぇ。
そんな風に続ける。
特に、真堂といったか、彼の個性は強力だ。
頭もかなり切れるらしく、団体戦での役割分担が上手い。
仲間たちからも信頼は厚そうだ。
───ああいう人こそ、仲間に欲しいなぁ…
なってくれはしないだろうけれど。
「依田、爆豪と仲良くなったのか?」
何の脈絡もなく。
轟は、小さく呟いた。
バスの中での出来事を疑問に思っているらしい。
「うーん…どうなんだろう。
いつも睨まれるから、嫌われてるって思ってたんだけどなぁ」
怖くてあんまり話したことなかったんだよね。
爆豪が何故自分を見ているのか、それは自覚しているつもりだ。
そして、時期的にはもうそろそろそれについて問われるはず。
拉致されていた間、敵連合から少なくとも自分についての話は出ていただろうから。
もう手は打つ。
どうするかはある程度決めていた。
爆豪と、仲良くするつもりは全くない。
そうかと轟は言った。
「なんか…依田と話すの、久しぶりだから……驚いちまった」
久しぶりに話すクラスメイトが意外な人物と親しくしていると驚くのだろうか。
そっか、とよくわからないなりに軽く流した。
それから順調にクラスメイトは集まり、一次試験には全員が合格した。
やったね、と皆でハイタッチする。
100人が通過してから数分、パッとモニターに注目が集まった。
『皆さん、これご覧下さい』
フィールド全体が映し出される。
そして、
ボボボボボ
全体が満遍なく爆発した。
爆弾でも仕掛けてあったのだろうか。
『次の試験でラストです!
皆さんにはこれからバイスタンダーとして、救助演習を行ってもらいます!』
ゲッと終綴は顔を顰めた。
───………苦手なやつだ。