第18章 その瞳は何を映す
───多いな。
会場入りして、最初の感想がこれだった。
会場は決して狭いわけではないのに、人でぎゅうぎゅうだ。
「えー…では、時間になったので仮免のヤツを……やります…あぁ眠い…」
そんな怠そうな声で、説明が始まった。
受験者は1541人。
勝ち抜けの試験で、先着100人。
事件発生から解決までに至る時間を迅速に行いたいとの理由があるそうだ。
受験者はターゲットを3つ身につけ、それをボールの的にするらしい。
1人が携帯できるボールの数は6つ。
3つ目のターゲットにボールを当てた者が"倒した"とみなされ、2人倒した者から勝ち抜きというルールらしい。
ゴゴゴゴゴ、と会場が展開される。
都市部、山岳部に工場地帯など、様々な地形がある。
好きな地形で戦っても良いようだ。
───それなら都市部かな。
───遮蔽物も多いから、練習になる。
終綴は自分にとって不利な場所を選ぶようだ。
訓練のつもりなのだろうか。
ここは、試験の場であるはずなのに。
「先着で合格なら、同校で潰し合いはない…
寧ろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋!
みんな、あまり離れずひとかたまりで動こう!」
緑谷の指示に、そうだなと同調する者がいる一方で、
「フザけろ、遠足じゃねぇんだよ」
「俺も、大所帯じゃ却って力が発揮できねぇ」
爆豪と轟は集団から離れていく。
「私も、思い切り暴れ回りたいから」
またあとで、と終綴も走って何処かに行ってしまった。
「おいおい、協調性ゼロかよあいつらぁ…」
クラスでトップを争う実力の3人が抜けてしまった。
それが不安なのか、愚痴を零す峰田。
「…依田さんはともかくとして、僕らは手の内がバレてるんだ、単独で動くのは良くないと思うけどな」
僕達も移動しよう、と言いながら緑谷は説明する。
「個性不明のアドバンテージを失ってるのは雄英だけで、学校単位での対抗戦なら普通は僕達狙うでしょ
依田さんは体育祭であんまり個性使ってなかったし、対策のしようがないんだけど…」
「くっそ、あいつマジでチートだな!」
「依田強すぎ~」
終綴について愚痴(?)をクラスメイトたちが吐いた瞬間。
カウントはゼロを切って、ボールが一斉にこちらへ向かった。