第17章 森の忍者は夜に狩る
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ドサリ。
女は地面に崩れ落ちた。
「ははははははは!
これで俺らの勝ちだな!
八斎會は"フクロウ"と若頭だけが脅威って話だもんなぁ!?
死んでなければこいつ手篭めにするなり何なりして、言うこと聞かせりゃこっちのもんだ!」
「お前ヤリたいだけだろ」
「ま、残りは1人だし?」
「1人くらいならどうにで……ッッ!!」
勝利を確信し笑っていた男のうち1人が、突然地面をのたうち回った。
は?とでも言いたげな表情を、その男に皆が向けた。
女は呑気に、おお、なんて感心している。
「無音にして貰ったけど…うん、やっぱりプロは凄いなあ」
彼女が右手に持つのはスタンガン。
かなり小型だが、男を見るに、大きさには似合わない威力のものなのだろう。
ゆらりと女は立ち上がる。
男たちは、数歩後ずさりした。
「な、さっき倒れ…」
恐れつつも、男達は戦闘態勢に入っている。
何が「こっちのもん」なのかは解らないが、とにかく女やその仲間たちにとって良くない方向に働くのは間違いないようだ。
はぁ、と女は溜息を吐く。
「私の噂知ってるのに、あの程度で勝てたと思えるの、すごいね…あんたら頭は花畑なの?」
それに。
言うこと聞かせたいのなら、個性も使わずに戦おうなんて…そんなの、無駄だよ。
「こ、こいつっ…!」
虚仮にされたのが理解できたらしい、1番近くにいた男が腕を伸ばした。
にゅるっと、触手のようなものが女に向かう。
しかし、それも一瞬にして引っ込んだ。
「!?」
「個性はね、こう使うんだよ」
掌を近くにいた男に向け、女はぐー、ぱー、と閉じたり開いたりを繰り返した。
ボッボッボッ、と男は爆発する。
「っ……や、やべえ」
何が起こったのか解らない。
だが、目の前の女が「やばい」のだけは理解できる。
逃げろ、と皆慌てて背を向ける。
しかし、女は速かった。
一瞬で先回りし、男たちの前に立ち塞がる。
そして哀れな男たちは、すぐに自分たちの置かれた状況を理解した。
一通りのない、細い路地の中。
自分たちの逃げ道は、完全に絶たれたのだということに。