第17章 森の忍者は夜に狩る
「な、何なんだよォお前はよぉ…!」
腰が抜けたのか、尻もちをついてそのまま後ずさる男。
もう仲間で動ける者はおらず、救けを呼ぼうにも呼べない。
「最初に自分で言ってたじゃん。…フクロウだよ」
呆れたように、女は溜息を吐く。
そんなことも知らないのかと。
「…ああ、でも安心して、みんな死んでないから。
ちょっと痛い思いしてもらっただけ。取引相手死ぬと困るし。…じゃあね」
唇の端を釣り上げ、女はニヒルに笑った。
もっとも、被っているフードのせいで、それは誰にも見られることはなかったのだが。
女はくるりと男に背を向け、陽のあたる場所へと歩みを進めた。
女はフードを被ったまま、自分の頭を撫でる。
鈍器で思い切り殴られた部分だ。
頭突きしてもいいように、また、後頭部へのダメージを直で与えられないようにするため、女はフードの裏側に鉄塊を仕込んでいた。
頭側にはクッションも付けられており、それでダメージは吸収されたらしい。
しかし、痛いものは痛い。
頭突きなんて基本しないし、クッションがあるとはいえ鉄塊は鉄塊。
頭に、少しダメージが響いていた。
ぐわんぐわんと音が鳴る。
───ああもう…明日も仕事あるのに…
これから暫くは、仕事が立て込んでいる。
ここ最近は仕事をしていなかったというのもあるし、それに何より、一気にいくつも引き受けた。
女は懐からスマホを取り出し、時間を確認する。
頭の中に入っているスケジュールと照らし合わせ、時間がないなと呟いた。
先の戦闘を思い出す。
戦闘と言うほどのものでもなかったが、戦ったのは事実だ。
自分は、複数人がそこに潜んでいることに、気付くことができなかった。
相手は決して弱くはなかったから、慣れているのだとは思うけれど。
何歩か歩いて、立ち止まる。
振り返って、先程まで自分のいた方向に目を向けた。
そして一言。
「やっぱ、勘…鈍ってるなぁ」