第17章 森の忍者は夜に狩る
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暗い場所。
昼間のはずなのに、そこはやけに暗かった。
建物に囲まれたそこは、人目につかない場所だ。
辛うじて、互いの顔を確認できる程度ではあるのだが。
表舞台には出てこない者が、そこにはいた。
影は2人分。
小さい影と大きい影───とはいっても頭一つ分も変わらないが───は、向き合っていた。
小さい方は、奇妙なシルエットをしていた。
鳥の嘴のようなものを、口元に着けている。
他の部位は明らかに人間であるはずなのに、その部分だけが浮いている。
ガサリ
奇妙な影は、懐から何か取り出した。
「これが….例の…………」
低い声は、それを受け取りながら問う。
「試作品だけど、効果は充分にある。良かったら試してみてよ」
美しい女性の声だった。
爽やかで涼しい声はそこに似合わず、不釣り合いだ。
ありがとよ、と下卑た笑みを浮かべる男。
そして、それを受け取ってから、しかしなぁとまた笑った。
「本当に"フクロウ"がいるなんて────噂だけかと思ってたぜ。姿を見るのは初めてだ」
「……………」
女は沈黙する。
「いつもフード被ってるらしいが…顔を隠す理由でもあるのか?」
「……………」
女は答えない。
なあ、と男は女に近づいた。
男が手を女の上着にかけ、そのままフードを脱がそうとする。
しかし、
ゾワリ
急に悪寒がして、男は動きを止めた。
「…触るな」
静かなのに、威圧感がそこにはあった。
「っ…」
「聞こえなかった?
その手を離せ」
女はその手を振り払う。
そして、フードの奥から鋭い眼光で相手を睨みつけた。
「殺されたいなら、相手するけど」
はは、と男は笑う。
「……何がおかしい」
「殺されたい訳ねぇだろ。
この場合、殺されんのは……そっちだよ!!」
「っ!!
まさか、」
女が振り向いた瞬間。
ガキン
不穏な金属音が、路地裏に響き渡った。