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水面下の梟【ヒロアカ】

第17章 森の忍者は夜に狩る


***
終綴がそこに着いたのは、日が沈んでからの事だった。

地元とは違った雰囲気に、終綴は思い切り伸びをした。
ここなら、自分の顔はそれほど知られてもいない。
襲われる心配は地元と比べると格段に下がるし、何より自由度が増す。

その分応援は呼べないから、自由に動きすぎるのも問題ではあるのだけれど。

ガヤガヤとした喧騒は、この街ならではなのだろうか。
出店が多く並んでいて、賑やかで楽しそうだ。
街灯や建物の明かりで煌めく街並みを、終綴は見下ろしていた。

​───仕事までまだ時間はある。

さて下調べを、と終綴はビルの屋上から飛び降りた。

ふわりと、羽織っているコートが風に靡いた。

人目につかない場所に降りた終綴は、フードを深く被った。
お気に入りのもので体を包み、気分は上々。
この服装に、怪訝な顔をしてくる者はいる。
しかし、襲ってくるとか、跡をつけようとか、そんな人間はいない。

​───ああ、そういえば…ここら辺、薬の売買が盛んな組織が多いんだよね。
​───縄張り争いも激しいって、聞いた事がある。

頭の中に叩き込んだ地図と照らし合わせながら、土地勘を身につけていく。

様々な組織の活動地域。
ヒーロー事務所の位置。
交番の場所。
人目につかない路地裏。

こんなに離れた場所への出張は、久々だった。
否、同伴者がいないという意味では、初めて。

家族の1人から「温くなった」と冷水を浴びせられ、終綴が感じたのは焦燥だった。

温いからこそ、自分の存在がまだバレていないのだろうとは思う。
しかし、だから何だと言うのだ?

主目的はあくまで家族なのだから。

​​───オールマイトが引退したから、ヒーロー界はヒーロー同士のコネクションを重要視していくはず。
​───コミュニケーション力、連携、協調性…


彼の言葉を思い出す。



​『​───────』




​───だめだ。しっかりしなくちゃ。



​───事態はもうすぐそこまで、来ているのだから。


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