第17章 森の忍者は夜に狩る
「さて!
これから寮について軽く説明するが、その前にひとつ」
頭を切り替える要領で、話題を変えた。
「当面は合宿で取る予定だった仮免の取得に向けて動いていく」
「そういやあったなそんな話…」
「色々ありすぎて頭から抜けてたわ」
ああ、と生徒たちからはぼんやりとした声が返ってきた。
襲撃やクラスメイトの誘拐で頭が一杯になっていたのだ。仕方ない。
「大事な話だ、いいか」
しかし、相澤はギロリと特定の生徒たちを睨みつけた。
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田…この5人はあの晩あの場所へ、爆豪救出に赴いた」
静まり返る。
B棟前では現在ブラドキングが生徒たちに同じく話をしているはずだが、その内容が聞こえてきそうなくらいに静かだ。
生ぬるい風が相澤の髪を揺らす。
「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたわけだ」
目を細めると、何人かの生徒は目を逸らした。
図星らしい。
揃いも揃って、と溜息を吐きたくなる。
「色々棚上げした上で言わせてもらうよ」
「オールマイトの引退がなけりゃ、俺は爆豪・耳郎・葉隠以外、全員除籍処分にしてる」
え、と掠れた声の主は緑谷だろうか。
想像もしていなかったらしく、皆呆然と立ち竦んでいる。
それほどまでに必死でクラスメイトの救出だけを考えていたのだろう。その志は立派だが、彼らは免許を持っていない。
冷静になれば頭は切れるはずなのに、と相澤は何とも言えない気持ちだ。
「彼の引退によって暫くは混乱が続く…敵連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ
行った5人はもちろん、把握していながら止めなかった13人も理由はどうであれ
俺たちの信頼を裏切った事には変わりない」
口では何と言っていても、応援はしているし、育てたいとも思っている。
だが、黙って見過ごしていいものでもないのだ。
「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして
信頼を取り戻してくれるとありがたい」
───これからも期待させていてくれ。
「以上!
さ、中に入るぞ元気に行こう!」
空気が重いのはわかっていたが、わざと明るい声を出してクルリと背を向けた。